Column コラム

フッ素塗布で子どものむし歯が半減した?予防のために小児歯科へ


 
「できれば子どもの歯はむし歯治療で削りたくない」「将来まで健康な歯を残してあげたい」と願う保護者の方は多いものです。
 
乳歯や生えかわったばかりの永久歯は、大人の歯に比べてエナメル質が薄く弱いため、一度むし歯になると進行スピードが速いという特徴があります。
そこで今、多くの小児歯科で推奨されているのが、歯科医院で行う「フッ化物歯面塗布(フッ素塗布)」です。
継続的に行うことで、乳幼児のむし歯が大幅に減少しているのです。
 
今回は、小児歯科の「フッ素塗布(フッ化物歯面塗布)」が、なぜむし歯予防に効果的なのかということと、大切なお子さまの歯を守るための予防習慣について、わかりやすく解説します。
 

院長

元山 裕太郎 院長


経歴
筑波大学附属高等学校 卒業
国立 東京医科歯科大学歯学部歯学科 卒業
東京医科歯科大学 歯学部附属病院 研修医 勤務
東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 う蝕制御学分野 所属
(東京医科歯科大学 歯学部附属病院 むし歯外来) 勤務
医療法人悠和会 麻布十番歯科オーラルケア 勤務
つづき歯科クリニックたまプラーザ(訪問歯科診療部) 勤務
医療法人高歯会 東歯科医院 勤務
医療法人誠慎会 峯歯科広尾商店街 勤務
現在に至る

医院名:都立大学ブラン歯科クリニック
所在地: 〒 152-0032
東京都目黒区平町1丁目25-14 右山ビル1F

 
 

乳幼児のむし歯がほぼ半分に?フッ素塗布の予防効果

歯科で行うプロフェッショナルケアの代表格が「フッ素塗布(フッ化物歯面塗布)」です。
 
フッ素塗布は、市販の歯磨き剤よりも高濃度のフッ化物溶液やゲルを、歯科医師や歯科衛生士が患者さまの歯の表面に塗布する方法です。
 
1歳児ごろ、乳歯が生え始めた時期から実施でき、成人では根面むし歯の予防として活用されるなど、生涯にわたってお口の健康維持に役立ちます。
 

継続的な塗布でむし歯を「半減」させる

乳幼児に対して定期的にフッ化物塗布を行った場合、むし歯がほぼ半分に減少したという高い予防効果は、厚生労働省の「健康づくりサポートネット」でも示されています。
(効果の程度は年齢や実施頻度、生活習慣などの条件により異なります)

参照:厚生労働省|健康日本21アクション支援システム~健康づくりサポートネット~|フッ化物歯面塗布 >

 

フッ素が歯を強くする3つの仕組み

フッ素が歯に作用するプロセスには、科学的な裏付けがあります。
単に表面をコーティングするだけでなく、歯そのものの構造を強くしたり、原因菌の活動を妨げたりする複数の働きを同時に行っています。
 

1.再石灰化を強力に促進する

お口の中では、酸によって歯のミネラルが溶け出す「脱灰」と、唾液によって修復される「再石灰化」が常に起きています。
フッ素はこの再石灰化のスピードを速め、初期むし歯の状態から健康な状態へ戻す手助けをします。
 

2.酸に負けない強い歯質を作る

歯の表面のエナメル質とフッ素が結びつくことで、もともとの歯の構造よりも酸に溶けにくい「フルオロアパタイト」という安定した構造を作り出します。
これにより、むし歯菌が酸を出しても歯が溶けにくくなります。
 

3.むし歯菌の活動を抑制する

プラーク(歯垢)の中にフッ素が取り込まれると、むし歯菌が糖分を分解して酸を作る能力を低下させます。
原因菌そのもののパワーを弱めることで、むし歯が発生しにくい口内環境に改善していくことを目的としているのです。
 
 

むし歯ができる仕組みと「3つの要因」にアプローチ

むし歯は、一つだけの原因で発生するわけではありません。
予防を効果的に行うためには、「お口の中で何が起きているのか」ということを把握して、それぞれの要因へアプローチすることが大切です。
 
むし歯は「歯の質」「細菌」「食物」の3つの要因が複雑に絡み合い、そこに時間の経過が加わることで発生します。
これらの一つ一つに対して対策を立てることが、健康な歯を守るために大切です。
 

1.歯の質を強化するアプローチ

フッ素塗布は「歯の質」そのものを強化し、酸への抵抗力を高めることで、むし歯になりにくいお口づくりをサポートします。
 

2.細菌(むし歯の原因菌)を減らすアプローチ

お口の中にすみつくミュータンス菌などの活動を減らすことが肝心です。
そのためには、毎日の丁寧な歯磨きや、歯科医院でのクリーニングによって細菌のかたまりである歯垢(プラーク)や、歯垢が硬くなった歯石を除去することが欠かせません。
 

3.食べもの(糖分)のコントロール

細菌の栄養源となる砂糖などの摂取頻度が高いと、むし歯リスクは非常に高まります。
甘いものを食べる量だけでなく、お口の中に糖分がある「時間」や「回数」をコントロールすることが大切です。
 

「脱灰」と「再石灰化」のバランスを守るために

健康なお口の中では、唾液の働きによって歯を修復する「再石灰化」が優勢に保たれています。
しかし、糖分を頻繁に摂取したり、歯垢(プラーク)が残っていたりすると、歯が溶ける「脱灰」の時間が長くなり、バランスが崩れます。脱灰が優勢な状態が続くと、歯の表面が白く濁り、やがて穴が開いてしまうのです。
「脱灰」と「再石灰化」のバランスを適切に保つために、ご家庭での食生活・食習慣の工夫と、歯科での定期的なお口のチェックを組み合わせることが効果的な予防につながります。
 
具体的には、時間をきめずに食べ続ける「ダラダラ食べ」を控え、「食べたら磨く」習慣をつけることが、歯を溶かす「脱灰」を防ぐポイントです。
 
 

毎日のケアが基本!プラーク(歯垢)を取り除く

フッ素塗布は有効な予防法の一つですが、日々の歯磨きや食習慣などと組み合わせることが大切です。
重要なのは、むし歯の直接的な原因物質である「歯垢(プラーク)」を日々のセルフケアでしっかりと取り除くことです。
 

歯垢(プラーク)1mgには10億個以上の細菌が潜んでいる

歯垢(プラーク)の正体は、お口の中の細菌が作り出した「バイオフィルム」と呼ばれる粘着性の高い沈着物です。
食べかすとは根本的に異なり、うがいだけでは決して落ちないという性質を持っています。
 

細菌の密度

わずか1mgのプラークの中には10億個以上の細菌が存在しているといわれています。
数値は研究や条件により幅があるものの、これほど高密度の細菌が歯に密着し続けることで、酸が産生されやすくなり、むし歯のリスクが高まります。
 

粘着力があり水に溶けない

プラークは水に溶けない多糖体でできているため、うがい程度では簡単に汚れを流せません。
歯ブラシの毛先をしっかりと汚れがたまっている部分に当て、「こすり落とす」ことが必要になります。
 

歯ブラシ+「すき間ケア」を心がける

特に乳幼児や生えかわり時期の子どもは、歯の形が複雑で、歯ブラシ一本ではどうしても磨き残しが出てしまいます。
 

歯間清掃用具の併用

「歯と歯の間」の歯垢(プラーク)は、歯磨きだけでは約6割程度しか落とせないといわれています。
デンタルフロスや歯間ブラシを併用することで、むし歯になりやすい「隣接面(歯と歯が接する面)」の汚れを効果的に除去できます。
 

保護者の方による仕上げ磨き

生えかわりが終わるまでのお子さまは、自分ですべての歯垢(プラーク)を落とすのは困難です。
夜寝る前など、1日の終わりに保護者の方が丁寧にチェックし、すき間に残った汚れをフロスでケアしてあげることが、お子さまの歯を守る鍵となります。

参照:厚生労働省|健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~|プラーク / 歯垢(ぷらーく) >

参照:神奈川県「今日から始めるすき間ケア~毎日のむし歯・歯周病対策~」 >

 
 

歯科医院でのフッ素塗布の流れと注意点

フッ素塗布は、乳歯が生え始めた時期から受けることができ、成長に合わせて定期的に継続することが推奨されています。
その具体的な手順と、効果を維持するためのポイントをご紹介します。
 

フッ素塗布の流れ

歯科で行うフッ素塗布は、薬剤がしっかりと歯に作用するよう、適切な前処置とセットで行われます。
 

専門的な歯面清掃(クリーニング)

歯の表面にプラークや膜(バイオフィルム)が残っていると、フッ素が浸透するのを邪魔してしまいます。
まずは歯科衛生士や歯科医師が専用の器具を用いて、歯をツルツルの状態に掃除します。
 

高濃度フッ化物の塗布

お子さまの年齢やお口の状態に合わせて、溶液、ゲル、または泡状のフッ化物などから選択します。
歯ブラシや綿棒、または専用トレーを使って、すべての歯の表面に丁寧に塗布します。
 

お一人お一人お口に合わせたアドバイス

塗布の待ち時間や終了後に、お子さまの磨き残しのクセや、むし歯リスクに合わせた歯磨き指導、食習慣のアドバイスを保護者の方に行います。
 

塗布後の「30分間」が大切

フッ素塗布を終えた後、その効果を歯に定着させるためには守っていただきたいルールがあります。
 

うがいや飲食を控える

塗布終了直後は、フッ素がまだ歯の表面で反応している最中です。
塗布後30分間は、うがいをしたり、飲みものや食べものを口にしないよう指導しています。
唾液が溜まってつらい場合は、無理のない範囲で吐き出してください。対応は歯科医院の指示に従いましょう。
 

年2回以上の継続がおすすめ

フッ素塗布は1回ではなく、継続することが大切です。
年に2〜4回程度を目安に、必要に応じて継続することで、予防効果の維持が期待できます。

参照:厚生労働省|健康日本21アクション支援システム~健康づくりサポートネット~|フッ化物歯面塗布 >

 
 

お子さまの将来の笑顔を守るために

フッ素塗布は、天然の歯を守るために、適切な方法と量で行うことで有効性が期待される予防法です。
乳歯のむし歯は、将来の歯並びや顎の発育にまで大きな影響を及ぼします。
子どものころから「お口の健康を守るために歯科医院へ行く」習慣を身につけることは、一生の財産になるでしょう。
 
私たちは、お一人お一人に合わせた予防プログラムを通じて、お子さまのすこやかな未来をサポートいたします。
毎日の歯磨きで気になることや、ちょっとした疑問でも構いません。どうぞお気軽にご相談ください。

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